公開日:2026年9月6日(最終更新:2026年9月6日)
2026年10月1日から、企業のハラスメント対策がさらに強化されます。
今回、新たに事業主の義務となるのは、次の2つです。
- カスタマーハラスメント(カスハラ)対策(改正労働施策総合推進法)
- 求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策(改正男女雇用機会均等法)
後者は、一般に「就活ハラスメント」「就活セクハラ」などと呼ばれることもあります。採用面接や会社説明会、インターンシップなど、採用活動の中で求職者がハラスメントを受けることを防ぐため、会社として必要な対策を講じることが求められます。
「うちはクレームがそれほど多くないから関係ない」
「新卒採用をしていないから、就活ハラスメント対策は必要ない」
と思われる会社もあるかもしれません。
しかし、今回の義務化は企業規模を問わず、従業員を1人でも雇用するすべての事業主が対象です。パワーハラスメント防止措置のときにあった中小企業への猶予期間も、今回は設けられていません。
また、就業規則へ一文追加すれば終わりというものではありません。会社としての方針を決め、相談窓口や対応方法を整え、従業員へ周知するところまで準備しておく必要があります。
今回は、2026年10月1日の施行までに会社が準備しておきたい、カスハラ対策と就活ハラスメント対策について整理します。
この記事でわかること
- 2026年10月1日から義務化される2つのハラスメント対策の内容
- カスハラ対策として会社が講じなければならない措置
- 就活ハラスメント(求職者等セクハラ)対策として整えるべきこと
- 対応しなかった場合のリスクと、10月までに確認しておきたいこと
2026年10月1日から何が変わる?
今回の法改正により、カスタマーハラスメント対策について、事業主が必要な防止措置を講じることが義務になります。根拠となるのは、2025年6月11日に公布された改正労働施策総合推進法です。
また、採用面接や会社説明会、インターンシップなどに参加する求職者等に対するセクシュアルハラスメント、いわゆる就活ハラスメント・就活セクハラへの対策についても、改正男女雇用機会均等法により事業主の義務となります。
これまで、これらの対応は指針の中で「望ましい」とされていました。今回の改正で、「望ましい」から「講じなければならない」へと位置づけが変わったことが最大のポイントです。
厚生労働省の実態調査(2024年公表)によると、過去3年間にカスハラを受けた経験がある労働者は約10.8%、就職活動やインターンシップを経験した人のうち、就職活動中にセクハラを受けたことがあると回答した人は約30%にのぼります。決して一部の会社だけの問題ではありません。
会社として「ハラスメントは禁止しています」と表明するだけでなく、実際に問題が起きた場合に対応できる体制まで整えておくことが必要です。
① カスタマーハラスメント対策で会社が準備すること
カスハラ防止指針(令和8年厚生労働省告示第51号)では、事業主が講じなければならない措置が大きく4つの柱に整理されています。
1.方針の明確化と、従業員への周知・啓発
カスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、会社が従業員を守るという方針を明確にし、従業員へ周知・啓発することが求められます。
具体的には、就業規則や服務規律への明記、カスハラの内容とあらかじめ定めた対処方法の周知、研修の実施などが該当します。店頭やホームページで会社の方針を掲示することも、有効な周知手段とされています。
2.相談体制の整備
従業員がカスハラを受けたときに相談できる窓口を設け、その存在を従業員へ知らせておく必要があります。
窓口を「置いただけ」で終わらせず、相談内容や状況に応じて適切かつ柔軟に対応できる体制にしておくことが重要です。担当者が判断に迷わないよう、対応の流れをあらかじめ決めておきましょう。
3.発生後の迅速かつ適切な対応
相談があった場合には、事実関係を迅速かつ正確に確認したうえで、被害を受けた従業員への配慮の措置と、再発防止に向けた措置を講じることが求められます。
被害者と行為者を引き離す、メンタルヘルス面での相談対応を行う、必要に応じて警察へ通報したり弁護士へ相談したりすることなどが例として示されています。
4.抑止のための措置(悪質なケースへの対処方針)
特に悪質と考えられる行為に対する対処の方針をあらかじめ定め、従業員へ周知し、その方針にもとづいて対応できる体制を整えることが必要です。
警告文の発出、法令の範囲内でのサービス提供の拒否や出入り禁止、警察への通報、仮処分命令の申立てなどが具体例として挙げられています。現場の担当者が「どこまでやってよいのか」を判断できる基準を、会社としてあらかじめ示しておくことが、この措置の要点です。
あわせて講じるべきこと
上記に加えて、相談者のプライバシーを保護すること、および相談したことや事実確認に協力したことを理由に不利益な取扱いをしない旨を定め、従業員へ周知することが求められます。
東京都内に事業所がある会社は、条例とあわせた確認を
東京都では、2025年4月1日から「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」がすでに施行されています。
都条例と国の法改正は並列の関係にあり、都内に事業所を有する会社は両方を確認する必要があります。すでに条例対応として方針を策定している会社も、10月からの措置義務の内容と照らして、不足がないか確認しておくことをおすすめします。
② 就活ハラスメント・就活セクハラ対策で会社が準備すること
今回の義務化では、現在働いている従業員だけではなく、採用活動に参加する求職者等も保護の対象になります。
いわゆる「就活ハラスメント」とは、採用活動やインターンシップなどの場面で、求職者等が受けるハラスメントを指して使われる言葉です。今回、企業に義務付けられるのは、その中でも特に求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防止するための措置です。
対象となる場面には、次のようなものがあります。
- 採用面接
- 会社説明会
- インターンシップ
- OB・OG訪問や従業員との面談
- 教育実習や看護実習
- SNSやオンラインツールを利用したやり取り
会社としては、採用担当者だけでなく、面接に参加する管理職や、インターンシップを受け入れる現場社員なども含めて、ルールを共有しておく必要があります。
就活ハラスメント対策として10月までに確認しておきたいこと
- 求職者等へのセクシュアルハラスメントを禁止する方針を明確にする
- 違反した従業員には厳正に対応することを明確にする
- 採用面接やインターンシップ等のルールを決める
- 面談の時間・場所・実施体制を整理する
- 求職者とのSNS等での連絡方法を決める
- 求職者が相談できる窓口を設ける
- 相談があった場合の事実確認方法を決める
- 被害を受けた求職者への配慮や再発防止策を決める
- 相談者のプライバシーを守る
- これらの内容を従業員や求職者へ周知する
特に注意したいのが、採用担当者や現場社員と求職者との個人的な連絡です。
例えば、個人のSNSアカウントで求職者と連絡を取ったり、必要のない時間帯や場所で1対1の面談を行ったりすることについても、会社としてあらかじめルールを決めておくことが大切です。
また、相談窓口については、社外の求職者が「どこに相談すればよいか分かる状態」にしておくことがポイントになります。既存のハラスメント相談窓口の対象を求職者まで広げたうえで、採用ページや説明会資料に窓口を記載しておくとよいでしょう。
対応しなかった場合、どうなる?
今回の措置義務に、直接の刑事罰(罰金・懲役)は設けられていません。
ただし、罰則がないことは、対応が任意であることを意味しません。措置が不十分な場合、事業主は厚生労働大臣による報告徴求・助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合には、その旨を公表される可能性があります。
また、カスハラによって従業員が心身の不調に至った場合には、安全配慮義務(労働契約法第5条)違反として、民事上の責任を問われる可能性もあります。措置義務への対応状況は、その判断材料として参照されることが考えられます。
「罰則がないから後回し」ではなく、会社と従業員を守るための備えとして、施行日までに体制を整えておくことをおすすめします。
よくあるご質問
「就活ハラスメント」と「求職者等へのセクシュアルハラスメント」は同じ意味ですか?
「就活ハラスメント」は、採用活動中に求職者が受けるさまざまなハラスメントを広く指して使われる言葉です。今回、2026年10月1日から企業に防止措置が義務付けられるのは、正式には「求職者等に対するセクシュアルハラスメント」です。
そのため、本記事では検索されることの多い「就活ハラスメント」「就活セクハラ」という表現も使いながら、正式な制度内容をご案内しています。
新卒採用をしていない会社でも就活ハラスメント対策は必要ですか?
はい。中途採用やインターンシップなど、求職者と接する機会がある会社でも確認が必要です。採用活動を行う可能性がある場合には、事前に方針やルールを整えておくことをおすすめします。
面接担当者だけに説明すれば大丈夫ですか?
面接担当者だけでなく、インターンシップの受入れ担当者や、求職者と接点を持つ可能性のある管理職・従業員にも、必要なルールを共有しておくことが重要です。OB・OG訪問に対応する社員も対象に含まれます。
お客様と接する仕事が少ない会社でも、カスハラ対策は必要ですか?
はい。今回の義務化は業種や企業規模を問わず、従業員を1人でも雇用するすべての事業主が対象です。顧客対応の頻度が低い会社であっても、方針の明確化や相談体制の整備は必要になります。
すでにパワハラ・セクハラの規程や相談窓口がある場合、新たに作り直す必要はありますか?
既存の規程や相談窓口を活かしながら、カスハラおよび求職者等セクハラに対応する内容を追加・拡張する形で整備することが可能です。現在の規程や窓口の運用状況を確認したうえで、不足している部分を補う進め方をおすすめします。
いつまでに準備すればよいですか?
施行日は2026年10月1日です。方針の策定、規程の見直し、相談窓口の整備、従業員への周知までを行う必要があるため、直前ではなく、余裕をもって着手されることをおすすめします。特に従業員への周知と研修には一定の期間が必要です。
まとめ|カスハラ・就活ハラスメント対策は10月直前ではなく今のうちに
2026年10月1日から、
- カスタマーハラスメント対策
- 求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策(就活ハラスメント・就活セクハラ対策)
が事業主の義務となります。
「今の規程で対応できているのか分からない」
「就活ハラスメント対策として、採用ルールをどこまで作ればよいか分からない」
「相談窓口や対応フローまでまとめて整えたい」
という場合は、当事務所へご相談ください。
現在の就業規則やハラスメント規程、相談窓口、採用時のルールなどを確認したうえで、2026年10月1日の施行に向けて必要な対応を整理し、規程の見直しや社内体制の整備までサポートいたします。
お問い合わせは、当事務所のお問い合わせフォームからご連絡ください。
参考資料(厚生労働省)
この記事の執筆者
細谷社会保険労務士事務所 代表 社会保険労務士 細谷 真梨
東京都中央区日本橋茅場町の社会保険労務士事務所。中小企業を中心に、労務相談、給与計算、社会保険手続き、就業規則の作成・見直しなどを通じて、経営者の「心強い伴走者」として日々の労務管理を支援しています。
※本記事は、公開日時点の法令や制度に基づいて作成しています。個別の事案については、会社の状況やこれまでの経緯によって対応が異なりますので、専門家へご相談ください。

